三本の映画

  幼児退行症というか、子供のころに見たものしか鮮明に思い出さない。

  ロバート・アルドリッチの『何がジェーンに起ったか?』、ドン・シーゲルの『殺人者たち』、ジャック・ベッケルの『現金に手を出すな』の三本。

 ハワード・ホークスの『三つ数えろ』とスチュアート・ローゼンバーグの『暴力脱獄』にさしかえてもいい。













   作家名であげたけれど、覚えているのはやはりスターたちのシルエットだ。『ジェーン』では、ベティ・デイヴィス、ジョーン・クローフォード、ヴィクター・ブオノ。あのモノクローム映画の気味の悪さは、何十年たっても忘れられない。レンタル・ショップの棚でも見かけるが、ビデオでもう一回観ようとは思わない。

 『殺人者たち』だと、リー・マーヴィンとロナルド・レーガンの強烈さを凌駕してジョン・カサヴェテスの存在が光っていた。愛の幻想に翻弄される気の毒な男の生き死にが見事。


『ミステリー作家90人のマイ・ベストミステリー映画』小学館文庫1999.1 
 


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