『ミステリマガシン』ベスト3・2001年

 『北米探偵小説論』注釈 映画を探して09
  『ミステリマガシン』の毎年三月号に載るアンケート。2001年度


『新編 美女と犯罪』
山田宏一 ワイズ出版
『60年代アメリカ映画』上島春彦+遠山純生 エスクァイアマガジンジャパン
『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』ゼルダ・フィッツジェラルド 新潮社







 映画は二時間かそこらで終わってしまう。しかし映画について書かれた文書は『美女と犯罪』のように延々とつづいて、淀みなく流れるだけでなく数かずの支流を生じてうねっていく。終わりが見えない。そういう文章の一級品に出会うと、そのうねりに身をまかせて、何本の映画を観るよりもずっと豊かな感動をうることができる。キーワードは犯罪と運命の女。いずれもミステリには欠かせない。その意味でも『新編 美女と犯罪』486ページはありがたい本である。一読二読、そして索引を使ってあちこちとページをとびまわり「映画史」(ゴダール的な用語で厭味ですか)のいくつものエピソードを遊んでみるのも一興。
 一方、『60年代アメリカ映画』のキーワードは追憶と悔恨か。これは映画史(また使っちまった)を読み直す志向をもった研究書にとっては避けられない選択かもしれない。悔恨が少しずれると遺恨になる。時代への恨み。しばしば感傷のかたちでよみがえってくる或る映画の一シーンのように……。


 話はとつぜん変わるが、ゼルダはわたしにとって奇妙なレベルでの「運命の女」だ。『パラダイスのかけら』という英語版作品集は持っているけれど、全作品の翻訳が出たのは買わないわけにいかない。すぐには読まない。きわめていいかげんな観測だが、いつか時期がきたら読もう。それまでは手元に置いておきたい。







  

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